天保異聞 妖奇士 説二十

あー! bonseにやられたっ!
*1がボケてるのは予想してたんだよ。25年ぶりに息子に会ったのに全然驚かないとか、単にbonseがそんな安直な展開を作る訳がない、とかその辺りの違和感で。
だけど本当は、実の息子だって気付いていたのか。

おそらく周りの証言からして、痴呆の気はあるのだろう。でも途中から正気に戻ってたのか。
・・・往壓は実家に戻ってもどう在ればいいのか分からなかった。
それと同じく、母親もどう往壓と接すればいいのか分からなかったのだろう。

鳥居耀蔵は往壓が幼い頃から知っていた模様。だから初めに『蛮社改所』に竜導往壓を入れたのか。
往壓を「選ばれた者」「徳川を救う者」と言うが・・・

往壓

戻って来た往壓に、叔父はこのまま実家に戻り『竜導往壓』に戻るよう誘う
本来なら勘当された往壓は家名を継ぐ事はもとより、そもそも家の敷居を跨ぐ事さえも赦されない。現に叔父は良い気分ではない様子。
――その本心は、養子に貰った「竜導往壓」が居なくなった為、家を継ぐ者が欲しいだけだった。
もちろん利用されるのも母親から「他人」の目で見られる事も嫌い、断る往壓。
しかし養子となり二度と実家には帰れない放三郎は、それでも戻れるのなら良いではないかと言うが・・・

現在(いま)の往壓は「竜導家の武士」ではない。
浮民で在り奇士で在り駁竜で在り――色々な存在が複合している「ただ」の往壓でしかない。
往壓が『武士』だったのは15年間。しかし現在の往壓で在るのは25年以上。
つまり「竜導往壓」という人格を形成している成分は、「武士」よりも「往壓」の方が多い。
その25年を無駄にしない為に・・・雲七の死を無駄にしない為に往壓は「竜導家」を捨てる決意をした。

歳三

農家の家に生まれ、丁稚として上京してきた歳三。
そのまま大人しくしていれば、いずれは店を継ぐか「のれん分け」をさせて貰えただろう。
・・・しかし、彼もその時自分の人生に敷かれたレールを見てしまった。
歳三は商人になんてなりたくなかった。人の為に在り、美しく生きる武士になりたかった
そして『竜導往壓』という武士の名と、刀を手に入れたが――そんな姿形だけの「武士」は歳三の望んだモノと違っていた。
そして歳三は、自らの意志で『竜導往壓』という名と「武士」=妖夷『金士』を捨てる。

だがその時、彼は見てしまった。見せられてしまった。・・・土方歳三の最後を。
全ての仲間が死に斃れた戦場。そこに独り立ちつくし、凶弾に斃れる自分。
曖昧に見えるレール=予想した未来なんかじゃなく、クッキリと見える終着駅=己が死ぬ時の「未来」を識ってしまう。
それは絶望ではないのか?
――けれど、土方歳三はそれを受け入れた。・・・満足出来る死に場所だと。

歳三が憧れた『武士』。
それは「武士」という身分ではなく、「侍」という生き方だろう。
現に周三郎は歳三の事を「侍」と言った。
それも、敵を前にして武士の命である刀(?)を投げ捨てるという、武士の禁忌を行った直後に。
・・・その後の土方歳三は「侍」として生きたのだろうか?

家の為に生き、家を継ぐ為だけに生きる。それに逆らう者は誰であろうと赦されない。
そして他の武家(刀)を喰い、成長する。
まさに妖夷『金士』は小笠原放三郎の言う通り「武士」そのものだった。

ところで、養子の「竜導往壓」が戻った理由が明確にされてないんだけど・・・竜導家に戻ったのは何故?
どうも「名」と「刀」を捨てたら、何も残らなかった。って感じがするんだけど・・・

*1:往壓の母