西の善き魔女 第08話
結局、フィリエルを一番守ろうとしていたのは、やっぱりルーンだった。
フィリエルを「異端」から遠ざける為に自分から離れさせ、安全な「ロウランド伯爵夫人」の地位に就けさせようとした。
そして・・・元凶であるリイズ公爵を殺そうとした。
何だかんだ言っても、ユーシス達は立場や世論に囚われているから、大胆な事は出来ないんだよな。
でもルーンは他人との関わりを断ち、ロウランド家を巻き込み、自らが「貴族殺し」の罪を被ろうとも行動に出た。
フィリエルを守る。ただそれだけの為に、ルーンは人生を賭けた・・・
で、実際にリイズ公爵を殺したのは違う奴なんだけど・・・見た目からすると賢者って感じだな。
んで、その正体はロットっぽいけど・・・実際はどうなんだろう?
皆がフィリエルを守ろうとしていた。
特にルーンは「蛇の杖」の恐ろしさを身をもって知っている。
だからこそ、とにかくフィリエルを「異端」から離そうとしてたけど・・・みんな、フィリエルの気持ちなんて無視してるよな。
とにかく安全な場所に逃れて、その為に大切な人々と別れて、それでフィリエルが本当に幸せになれると思ってるの?
そもそも、この女王制って何か間違ってるだろ。
実際は女王なんかじゃなくって、娼婦という名の「国の奴隷」でしょ?
国民の為に1人の女性を生贄に捧げるわけだけど・・・もちろん生贄に「幸せ」なんて無い。
ぶっちゃけ、100人幸せになろうと、「自分」が幸せになれなければ意味が無いんだよ。
人間なんて、自分の代わりに10人が拷問を受けようと、その事実を観測――識らなければ、痛くも痒くもない。
現に、こうしている間に世界中で色々な不幸が起きてるけど、それを識らない自分達は悲しくとも何ともないじゃん。
ニュース等で識って――観測して、初めて何かを感じるんだよ。