灼眼のシャナ 第10話

穏やかに流れる日常。
だが、その「穏やか」なのが「日常」の主旋律である悠二と違い、シャナにとってはあくまでも一時的なもの。
そして、二人の「日常」のズレは、段々と露わになっていく。
はぁ?! 何なの、この悠二の態度は!
鍛練をサボるって・・・強くなるんじゃなかったの? もう「平井ゆかり」みたいな人は出さないんじゃなかったの!?
悠二にとっては、あくまでも「紅世の徒」や「燐子」との戦いは「事故」程度の認識なんだな。
普通の人にとっては「天災」。感知できるようになった悠二にとっては「事故」。
だから遭遇するのは「運が悪かった」だけで、普通の人は対策なんて取らない。
悠二も「事故」だから、心構えや出会った時の覚悟はあるものの、具体的な対処はしない。
だけどシャナにとっては・・・フレイムヘイズにとっては、それこそが「日常」なのに。
子供が学校に行く様に、大人が会社に行く様に、祭日が訪れる様に・・・いつかは必ず「その時」がやってくる。
――悠二も、そんな「日常」に身を投じると決めたんじゃなかったのか?
・・・もしかすると、自分の存在が消えないと分かった途端に、そんな覚悟は無くなったのかもな。
すれ違う「日常」と想い。
シャナの言動も、理性的な言葉の中に感情的なものが混じり、そのせいで悠二は余計に混乱する。
鍛練よりも友達との約束を優先する悠二。
・・・その友達の「日常」を守る為に戦う決意をしたんじゃなかったのか?
シャナとの絶望的な力の差なんて、みっともない姿なんてとうに分かってた事で、それでもシャナと共に戦う事を選んだんじゃなかったのか?
人間の決意なんてそんなものか・・・。強い決意であろうとも、その「危機」が無くなれば、その覚悟も存在しなくなるか・・・
存在する事を望む、主を失った燐子。
どんなにみっともない姿になろうとも、ただ存在したいが故に行動する燐子。
そんな燐子を――シャナは狂った様に切り刻む。悠二が来なかった怒りや悲しみをぶつける様に・・・。
最後の最後まで、存在する事を望む燐子にトドメを刺すシャナ。
「いつものこと・・・」そう言って気にした様子もなかったシャナだが・・・ようやく来た悠二に寄りかかる様に抱きつく。
――以前のシャナなら、本当に気にしなかっただろう。フレイムヘイズとは「そういうモノ」だから。
でも、もうシャナは「炎髪灼眼の討ち手」ではない。「シャナ」という名前を持った人間だ。
・・・自らが存在する為に、他の存在を消す燐子。――人間だって同じではないだろうか?
ましてや、シャナにとっては人間と燐子の力の差など無いに等しい。
貪欲に存在しようとするモノ・・・あれは人間だ。
シャナは人間を消滅させたのだ・・・そんなの、平気なわけがない。
シャナが悠二に望んでいたのは戦友ではない。ただ、傍に居て欲しかっただけなのに・・・
鍛練だって、燐子を倒す為にやっているのではない。
燐子や「紅世の徒」に殺されない様にしていたのに・・・