みえるひと 第十五譚

その男・・・明神は豪放磊落だった。
嫌がる彼を無理矢理公園に連れて行って、酒を飲み出す。
とにかく無茶苦茶な男だった。
だけど・・・彼の事を始めて理解してくれる人だった。
幽霊が恐くて、やがて『世界』を恐れ、それに刃向かい、暴れていた事。
「僕にはユーレイが見えるんです」そんな悩み事など誰にも言えず、本当の孤独を味わっている事*1
だが、生きている人間から相手にされず、誰にも相談出来ずに存在し続ける陽魂も、彼と同じ境遇だと明神は語る。
言い返せない彼を、おもむろに抱きしめる明神。
そして彼が決めた事―――『戦う』ことを教えようと言う。その『戦う』相手と、その術を。
明神の「訓練」として、巨大な陰魄と毎日戦い続ける彼。
戦う術―――梵術の存在。その使い方。そして剄の操り方を、戦いを通して学ぶ彼。
そして共に居続ける日々・・・
ある日、オンボロアパートを買う明神。
そのアパートは、人と陽魂が共に暮らす場所。陽魂の話を聞く場所であり、寂しさを無くす場所―――うたかた荘
2年2ヶ月。ひとりぼっちじゃなかった彼。
陽魂も、寂しい人間も、みんな家族と言ってくれる明神。
・・・それは、彼が幼い頃から望んでいた場所、そして暮らしだった。
彼がその日々をどれだけ大切に思っていたかは、明神よりも正確に「共にあった」時間を憶えていた事からもよく分かる。
だが、最後の日はやって来た。
いつもの様に仕事が終わるはずだった。
だがそこにはハセが居て、彼は自分の力に慢心していて、それを止める明神は居なかった。
彼のおごりは、最悪のかたちで終末を告げた。

*1:AIR観鈴と同じ