ゼーガペイン #18

今の守凪了子の状態は哲学的ゾンビではないと思う。
論理的に行動しているけど、プログラム的な動きではない。
だけど、感情による「ゆらぎ」や「不確定性」が少なすぎて・・・まるで人間の真似をするロボットに見える。
「感情」データがアルティールに残っているバグは、シンでも直せなかったのか――必要だと思わなかったのか。

そして十凍京。
学校を無断欠席し、水泳部の復興をする気配が全く無い。
5ヶ月間の成果――ようやく再建出来た水泳部。育み、復元出来た友情。
全てがリセットされてしまった。
予定調和の「非日常」。親友からの冷たい言葉。
――全てが虚しく感じる。
このままでは十凍京も・・・ルーシェン達の様に「日常」を捨てるか、シマ達の様に道化を演じるか――「前」の様に虚無に生きる事になってしまう。
「現実」には、ホログラフィである十凍京――セレブラント達は干渉出来ない。
そして舞浜サーバー内でも・・・全てが虚構だと知っている為、実感など無い。
痛み――五感も、神経から脳に伝わる電気信号ではなく、データという「情報」だと知っている。
・・・だから、何も感じない。
日常も知り尽くして・・・周りに変化は訪れず、何も積み重ねられない事を識っている。
・・・だから、日常に意味は無い。
ホンモノとは何だ?
どちらの世界にも「生きられない」セレブラントより、サーバー内の人間の方がホンモノではないのか?
それとも、所詮データでしかない「皆」もニセモノで・・・現実に干渉出来るシン達だけがホンモノなのか?
――自分達は、あの心を持たない自動機械にも劣るのだろうか?

人類は、セレブラント達は限界が近いのかもしれない・・・